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【実話怪談】消えた花畑

投稿日:2021年1月8日 更新日:

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菜の花畑

小学校低学年頃の夏のこと。
当時住んでいたのは、神奈川県内の田舎でも都会でもないごくありふれた住宅街。

もうすぐ夏休みという暑い時期に、ひとりで下校していた。
小学校から自宅までの道のりで、とある家の裏側に一軒家が1、2軒くらい建てられそうな土地があり、そこにきれいな菜の花畑がひっそりとあることに気づいた。

こんなとこに花畑があったかと不思議に思ったが、入ってみることにした。
その花畑に入るには、家と家の間の非常に狭くて暗い隙間を通らなければ入れず、体を横向きにしながら隙間を抜けると、そこには明るい陽光に照らされ、モンシロチョウの舞う菜の花畑があった。
そこは周囲を家々に囲まれた中にぽつんと存在する不思議な空間だった。

それから何度か寄っていたが、誰もいないし、周囲の家々もとても静かで何の音もしない。人の声も車の音も何かの生活音もまったくしない。

そして、その菜の花畑ではどういうわけか、夏だというのに暑さを感じない。
常に、心地よい暖かさで天気が曇りでもそこに入ると包み込む様な陽光が差している。

誰かの家の庭や敷地というわけでもなさそうだし、物心ついたときからこの近くに住んでいるのに、どうして今まで気付かなかったんだろうと思いつつ、でもなぜか、そこに来ると妙に気持ちが落ち着く。

何をするわけでもなく、ひとりでただぼーっとしていた。
嫌なことも忘れられる、余計なことは考えなくて済む。
ただきれいな菜の花が溢れ、真っ白なモンシロチョウ達がその上を舞っている。
それを見ているだけで十分だった。

後日、よく遊んでいた友達にこの花畑を知っているか聞いてみたが、「知らない」と言うので連れて行くことにした。
しかし、あるはずのその場所にどうやっても辿り着けない。
このへんのはずなのに、というところまで行っても、どういうわけか住宅街の風景が変わっているようで、花畑につながる家と家の隙間を見つけることができない。

狐につままれたような気持ちでいると、友達から
「夢でも見たんじゃないの?」
と言われるも、夢なんかではないはっきりとした感覚や記憶があるのだ。

結局、見つけることはできなかったが、小学生のことなのですぐに別の場所で遊び始めてしまい、特にそれ以上気にすることもなかった。

それからしばらく経って、夏も終わりに差し掛かろうとする頃、またあの菜の花畑に行きたくなった。
しかし、花畑は忽然と消えてしまっていた。
いや消えてしまったというより、やはり辿り着けない。
このへんだというのは分かっている。でもまるで以前から存在していないかのように、昔から建っていた風の住宅街が続くばかり。

新しい建物がその土地に建ったというわけでも、菜の花が刈り取られたというわけでもない。
まるで住宅街自体が変形して、あの花畑を隠してしまったかのようだった。

子供ながらに大きな喪失感を覚え、もうあの場所には行けないのかもしれないと何となく思った。

家に帰った後、親にあの辺にあった花畑を知っているか聞いてみた。
返ってきた答えは、
「あんなとこに花畑なんてあるわけないだろ。お前が生まれる前から、この近所に菜の花が咲いているような場所はないし、ずっと住宅があったよ。」
というものだった。

夢か幻だったのだろうか。
それにしてはリアルな感覚として残っているのだが。

大人になった今でも菜の花をみると、あの花畑を思い出す。
だから住宅街を歩いているときは、いつかどこかにあの場所へ通じる隙間があるのではないかと探してしまうのである。

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